日本における蝋燭の始まりは、奈良時代。
中国から仏教と共に輸入された蜜蝋蝋燭が始まりと言われている。
歴史ある京都の中村ローソクは、1888年に中村商店として創業。
130年以上、変わらない製法で一本一本作り続けている。
日本ならではの製法を守り抜く
和蝋燭は原材料がすべて植物由来。
主に櫨(ハゼ)の実を使用しているため、石油由来の西洋蝋燭に比べて環境負荷が少ない。
植物性の原料で作られている和蝋燭の光は、ほんのりと暗い橙色。
優しく温かみのある夕日のような灯火が特徴的である。
かつて和蝋燭は提灯に入れて使うことが多かった。
蝋が減っても炎の高さが変わりにくいよう、上にいくにつれて太く作られていたため
今も受け継がれる和蝋燭ならではの形が形成されている。
和蝋燭が持つもう一つの特徴は、独特の燃え方。
太い芯の内部が空洞になっており、空気の流れができることで炎が大きく揺らめく。
神秘的で情緒ある雰囲気を醸し出してくれるのである。
風が吹いていない状況で炎が揺らめくこともあり、芯の中が空洞で空気が絶えず芯の中に供給されるため、多少の風で消えることもない。
電気がなかった時代、人々は夜になると
月の光と蝋燭の灯りのみで暮らしていたと言われている。
しかし、大量生産が始まり安価で手に入れられる西洋蝋燭が浸透したことや
時代と共に発達した電気の台頭により、蝋燭自体の需要が衰退してしまったのだ。
自然がもたらすささやかな変化とともに
光の揺らぎと、少しずつ溶け、
変わりゆく姿で時の変化を伝えてくれる心地良さ。
「蝋燭は光を、お香は香りを」という言葉に表現されるように、
一つのものに役割を託す昔ならではの潔さにさえ美を感じることができる。
時代が変われど、変わらぬ製法で作り続けられている和蝋燭。
日常とともにあった自然の光が、現代においてはリラックス効果があるものとして
様々な場面で再び注目を集め、生き続けている。
技術に向き合い、大切にしてきたからこそ文化になる。
そんな変わらない製法の尊さを、これからも守っていきたい。