130年前から変わらない中村ローソクの製法には、
木型を使う製法と、生掛け(きがけ)と呼ばれる製法の2種類が存在する。
今回は木型の製法を紹介したい。
まず、竹串を差した芯を木型に差し込みセッティング。
溶かした蝋を流し込み、固まったら串を外して余分な蝋と芯をカットし、
1本ずつ木の棒で押し出すようにして取り出していく。
ローソクの形になったもの。「生地」と呼ばれる途中の段階。
日光にさらし乾かした後、「清浄生掛」と呼ばれる
上掛け用の蝋をこすりつけていく作業を行う。
長年の経験と熟練の技が光る繊細な作業
竹串に刺さった生地を数本まとめ、
固まらないように手の平で転がすように擦りつけていく様は
経験と熟練の技が光る工程とも呼べる。
そして乾燥させた蝋燭の芯回りと下部の余分な蝋を切り、形を整えたら完成。
絵蝋燭は、さらにここから絵師が絵を手描きしていくことで完成する。
日々櫨蝋(はぜろう)に触れている職人の手にはシミがなく、
艶がありとても綺麗だと言われている。
櫨蝋は昔から舞妓や歌舞伎役者の化粧下地としても用いられてきたほど、
保湿効果のある素材として知られているのがその理由だ。
中村ローソクではこの効能を生かし、ハンドクリームの販売も行っている。
地産地消を目指して
ハンドクリームが生まれるきっかけとなったプロジェクトがある。
和蝋燭が危機的な原料不足に陥っている現状を改善すべく、
中村ローソクをはじめ伝統工芸職人と京都市が協力し、和蝋燭の原料である櫨(ハゼ)の栽培を開始。
和蝋燭の原料に使える櫨は江戸時代から明治時代にかけて長年親しまれてきたが、
現在では生産する農家も激減し、存続の危機となっている。
櫨が実際に実を付けるまでに3~4年かかることや食害などもあるため、
他県の協力を得ながら、地産地消を目的として活動を続けている。
これらの活動の結果、現在では少しずつ櫨の生産量も安定し、
ハンドクリームという現代における新しい商品づくりに繋がっている。
130年前から変わらぬ製法を守るべく、モノづくりに真摯に向き合う中村ローソク。
原料不足が解消され、これからも変わらぬ製法で蝋燭を作り続けられるよう、
この取り組みをJAPAN MADEとしても応援していきたい。